「あやや、負けちゃった……」 目をぱちくりさせてそう言ったアネモネは あんまり悔しそうではなかった。 「悔しくないのかい?」  思わず当たり前のことを尋ねた俺に、彼女 はふるふると首を振って見せた。 「悔しくないって言ったらウソになるけど、 勝負はしょーぶだもん。しかたないよ」 「年齢のわりに、しっかりしてるんだな」  本気で感心した俺に、ぷうっと頬を膨らま せて、アネモネは言った。 「アネモネ、そんなに子供じゃないもん」 「これでも今年で、18歳になるんだよ!」  一瞬、俺は聞き間違いかと思った。 「……なんだって?」 「だからぁ、もう18歳なんだってば」 繰り返しそう言った彼女の瞳は、嘘や冗談 を言っている類のものではなかった。  だが、俺にはどうしても信じられない。 (どう見たって、小学生にしか見えないぞ) 愛くるしいほどに大きな目や、ぷにぷにと したほっぺたは、童顔で説明できる。  だが彼女の身体は、どう見ても2次成長前 の子供のそれだった。  だぼだぼの功夫着の上からでもわかるほど に、凹凸のない身体のライン。肉づきが悪い 以前に、骨格自体が子供そのものなのだ。  もうなにがなんだかわからない。 混乱のあまり、俺は鍵を探すことも忘れて 呆然と彼女を見つめていた。  アネモネもまた不思議そうに、そんな俺を きょとんとした顔で見つめ返していた。